【定番お題】今の気分を一句(2026.09)

今の気分を、そのまま五七五にしてみましょう。
うれしい、眠い、お腹すいた、ちょっと疲れた。そんな何気ない「心の一句」をどうぞ!
お使いのブラウザのメニューから「ホーム画面に追加」または「アプリをインストール」を選んでください。

今の気分を、そのまま五七五にしてみましょう。
うれしい、眠い、お腹すいた、ちょっと疲れた。そんな何気ない「心の一句」をどうぞ!
「今の気分を一句(2026.09)」に、106作品のご応募をいただきました。ありがとうございました!
うれしい気持ち、ちょっとした失敗、日々の疲れ、季節の移ろい、世の中への疑問まで。今回も、皆さんのさまざまな「今」が五七五に詰め込まれました。何気ない日常の一場面も、言葉にしてみると、思いがけない発見や笑いにつながるものですね。
今回のお題「今の気分を一句」は、テーマをあえて限定せず、そのとき感じたことを自由に詠んでいただくものでした。そのため、応募作品にも実に幅広い題材が集まりました。猛暑や物価高といった暮らしに直結する話題から、家族との時間、恋心、季節の風景、そして思わず笑ってしまう日常の失敗まで。一つのお題でありながら、106通りの視点や感情に出会えたことが、今回の選考の大きな楽しみでした。
特に印象的だったのは、暑さの厳しい夏から秋へと移り変わる季節を捉えた作品です。夏の暑さにうんざりする気持ち、エアコンのありがたさと電気代へのため息、秋の虫の音や朝の涼しさに感じる安らぎなど、季節と気分が密接につながっていることを改めて感じました。また、物価高やAIなど、現代ならではの題材を取り入れた川柳も多く、時代の空気を映す五七五の面白さが伝わってきました。
選考にあたって大切にしたのは、単に気持ちを説明するのではなく、読んだ人がその場面を思い浮かべたり、作者の感情を自然に感じ取れたりする表現です。「楽しい」「幸せ」「困った」と直接書かなくても、身近な物や何気ない行動を通して、その気持ちが十分に伝わることがあります。今回の入賞作品には、そうした五七五ならではの表現の工夫が光っていました。
金賞の作品は、ビールの泡が消えるという小さな変化に、相手に見惚れてしまう時間と恋心を重ねた一句です。銀賞の作品は、谷の音に包まれて大の字になる姿から、夏の心地よさと心の解放感が伝わってきます。そして銅賞の作品は、炊飯器を開けた瞬間の予想外の出来事を、誰もが共感できるユーモアに変えてくれました。いずれも、作者が置かれた場面とそのときの気持ちが、短い言葉の中で生き生きと表現されています。
一方で、世の中の出来事や気持ちをそのまま説明した作品も見受けられました。もちろん、率直な言葉には率直な言葉ならではの魅力があります。ただ、そこにもう一つ具体的な場面や意外な言葉の組み合わせが加わると、作品の印象はさらに深まります。同じ「暑い」という気持ちでも、何を見て、何をして、どんな瞬間にそう感じたのか。そんな小さな発見を大切にすると、自分だけの一句が生まれやすくなるのではないでしょうか。
「今の気分」は、明日になれば変わっているかもしれません。だからこそ、その瞬間の気持ちを五七五に残すことには、日記とはまた違った楽しさがあります。特別な出来事がなくても、いつもの暮らしの中には句の種がたくさん隠れています。これからも、うれしい日にはうれしい一句を、疲れた日には疲れた一句を、そして何もない日には「何もない」を楽しむ一句を。皆さんならではの言葉で、日々の気持ちを詠んでいただければうれしいです。
たくさんのご応募、本当にありがとうございました。次回も皆さんの個性豊かな作品に出会えることを楽しみにしています!


谷から聞こえる水音や自然の響きに包まれながら、夏座敷に大の字になって寝転ぶ。そんな開放感あふれる情景が、一読しただけで目の前に広がる作品です。
この句の魅力は、視覚だけでなく聴覚や身体感覚まで伝わってくるところにあります。「谷音」という言葉からは、谷川のせせらぎや山あいに響く自然の音が想像されます。そこに「大の字となる」という伸びやかな動作が加わることで、涼しさやくつろぎ、さらには日常の緊張から解き放たれるような気持ちまで感じられます。
特に「大の字となる」が効果的です。「気持ちがいい」「のんびりしている」と説明する代わりに、身体の姿勢そのもので心の状態を表現しています。読んでいるこちらまで、思わず手足を伸ばしたくなるようです。
結びの季語「夏座敷」も、作品全体の雰囲気を豊かにしています。風通しのよい空間、畳の感触、自然の音。多くを語らなくても、夏ならではの心地よい時間が浮かび上がります。
今回のお題は「今の気分」でしたが、この作品は感情を直接言葉にすることなく、情景と動作によって気分を伝えています。俳句らしい余白と季節感を備えた、味わい深い一句でした。

炊き立てのご飯を楽しみに炊飯器のふたを開けてみたら、そこにあったのは、まだ炊かれていないお米。そんな思いがけない失敗を、軽やかなユーモアに仕立てた一句です。
何より面白いのは、読み手の期待をうまく利用しているところです。上五の「炊き立ての」を読めば、誰もが自然と温かいご飯を思い浮かべます。ところが中七の「はずが開ければ」で少し不穏な空気が生まれ、最後の「まだお米」で予想が見事に裏切られます。
この展開がとても自然で、まるで短いコントを見ているかのようです。炊飯スイッチを押し忘れたのでしょうか。予約の設定を間違えたのでしょうか。事情を細かく説明していないからこそ、読み手は自分の経験と重ねながら楽しむことができます。
また、「まだお米」という結びにも味があります。ご飯になるはずのものが、期待した瞬間にはまだお米のまま。その当たり前の事実をあえて言葉にすることで、落胆とおかしみが同時に生まれています。
日常の小さな失敗は、その瞬間にはがっかりするものですが、五七五にしてみると人を笑顔にする作品に変わります。今回のお題が持つ、何気ない気持ちを自由に詠む楽しさをよく表した、親しみやすい川柳です。
目の前の相手にすっかり心を奪われ、せっかくの生ビールに手をつけることも忘れてしまう。そんな微笑ましい恋の一場面が、鮮やかに浮かび上がる一句です。
特に秀逸なのは、結びの「泡消える」という表現です。作者は「好きだ」「ドキドキする」といった感情を直接語っていません。それでも、グラスの中の泡が消えてしまうほど相手に見惚れていたという描写から、その気持ちが十分に伝わってきます。
また、ビールの泡が消えるという現象には、自然な時間の経過が含まれています。ほんの一瞬のようでいて、実はしばらく相手を見つめていたのでしょう。その時間を具体的に説明せず、泡の変化だけで読み手に想像させるところに、この作品の巧みさがあります。
「生ビール」という親しみやすい題材も効果的です。気取らない日常の風景の中に、ときめきと少しのユーモアが同居しています。五七五の調べも自然で、最後まで無理なく読み進められます。
目の前の小さな出来事を通して、大きな気持ちを表現する。そんな川柳の魅力がよく表れた、今回の金賞にふさわしい作品です。